すでにパン粉をまぶしてある、小さく切った豚肉をPが買ってきた。東京の平田牧場で食べたトンカツがあまりにおいしかったから、と言い、似たようなものが食べたいということで。いやあ、肉の質も違うだろうし、なんと言っても、揚げ方を聞かれてもあたしは困るわ、とウキウキしているPを横目で見ていた。案の定、揚げてね、と言う。
むっかーしむかし、一度だけトンカツもどきのものを家で作ったことがある。なんだかギトギトになってしまったことを覚えている。以来、揚げ物なんて家でしたことは一度もない。いや、トンカツはだーいすきである。one of my favoriteの日本食である(日本食?)。でも、揚げる最中にも油が飛んで周りは汚れるし、揚げた後の油の処理も面倒だし、大体デパートに行けば、おいしいトンカツも天ぷらも売っているではないか。しかし、日本のデパ地下がないここはフィンランド。しょうがない。
Mちゃんまで招待し、揚げ物を作る過程を見たことがない彼女は、鍋に入れるところを見たい見たい、とはしゃいでいる。いや、あたしも人がやるところを見たいよ。えーっと、深めのフライパンがあるから、それでいいわ。しかし、コンロは電気なんだよね。フィンランドがこれが普通らしい。電気の場合、火加減が難しい。すぐにさめないから、火をすぐに弱める、ということができない。最新式のはできるのかな。このアパートのは古い。
菜箸を油に入れて、泡が少し出たらOK、というのを料理番組で見たことがあるが、そのとき何を揚げていたのかは記憶にない。高温なのか、中温なのか。ネットで検索すると、二度揚げがおいしいとか、温度の違う鍋を二つ用意して揚げると良い、とかなんとか書いてあったが、そんな面倒なことあたしには出来ない(というか、する気がない)。
ならば適当。火が通ることを最終目的とする。箸を入れると泡が立つ。Mちゃんに、ほら、油の温度が高くなっている証拠だよ、と教える。ほーら、高温だよ、箸のさきっちょがいい具合に茶色になっている。箸揚げてどうすんの、と思いつつ、肉を入れれば温度も下がるさ、とそのまま揚げ作業続行。しゅわしゅわと泡が立ち、おお、見たことあるわ、こんな感じの鍋、とちょっと嬉しい。揚げ不足が心配で、コンロの温度を下げてしばらくひっくり返したりつついたりしていたが、やっぱり最初の油が高温過ぎたみたいで、結構焦げ茶の出来上がり。キツネ色ではない。が、許せないほど焦げ茶でもない。Pは全然問題ない、と言う。切ってみると、ちゃんと火は通っていて、それに結構ジューシー。とりあえず合格では。
日本のトンカツみたいにスライスしてお皿にのせてほしい、と言うので、「こんな一口サイズのカツを」と思いつつも、スライスする。すでに塩こしょうがしてあったのだが、これが結構しょっぱかった。が、PとMちゃんは平気なようで、かなりの好評。付け合せに、トマトピューレとケチャップで炒めたご飯。なんつーんですかね、あれ。オムライスの中に入ってるみたいなやつ。子供の頃は、チキンライスのことは「赤ごはん」と呼んでいた。チキンライスのチキン無し。
揚げた油は、前に「もしかして天ぷらでもするかも」と血迷ったときに日本から持ってきた、油を吸い取るパッドがあったので、それで処理して捨てた。役立って何より。
日本に帰ったら、トンカツ買いに行こうっと。