フィンランド語の「U」は、唇をpuckerさせて強く言うらしい。日本語の「う」よりもっと強い。Pは私が普通に日本語発音で「ムーミン」と言うと、絶対に笑う。じゃあ、もっと「ウ」と強く言おうと唇を突き出してみるが、普段しない唇の動きなので、疲れるんだわこれが。いちいち口の周りの筋肉を動かさねばならんって感じで。自分では、より正しい発音に近いつもりになってはいるが、やっぱりPはクツクツと笑いやがる。
逆に、Pが日本語を発音すると「う」が強すぎて妙に聞こえる。私は毎朝、ミルクにティーバッグを浸して電子レンジで暖め、これをroyal milk teaと呼んでいる。本当のロイヤルミルクティーとは一体何、と調べかけたが、なんだか色々な意見があって面倒なので、これをロイヤルということにした。ティーバッグでロイヤルもなにもないんだが。
で、昨日いつものようにこれを作っていると、「これは日本語でなんというのだ」とPが聞いてきたので、「ロイヤルミルクティー」と教えた(日本語なのか)。だが、彼が言うと、ミルクのルク、ロイヤルのルがやたらと強い。でもあたしは笑わないもんね。別に笑うほどおかしくないし。
私はカップを電子レンジに入れて、テーブルにお皿を並べていた。キッチンでは呪文のように「ろいやるぅ みるぅくぅ てぃー」とぶつぶつ繰り返しながら、自分のコーヒーの準備をしているP。すると突然、「ろいやるぅ みるぅくぅ てぃー!!」と叫ぶではないか。声にあまりのurgencyが含まれていたので、キッチンに飛んでいき電子レンジをのぞくと、ティーバッグが爆発してえらいことになっていた。Pの電子レンジは900ワットとパワフルなので、ちゃんとティーバッグをミルクの中に浸しておかないと爆発するのよね。これ、二回目。
単語レベルでも、言い方ひとつで意思の疎通は案外できるものだなと実感。
日本語の文法などまったく知らないPであるが、毎朝7時から8時までは日本語で話せと要求してくる。無茶言わないでよ、会話にならないじゃん、と言うが、そうやって赤ん坊は言葉を覚えるんだ、自分もそのアプローチをとると譲らない。朝の忙しいときに「今のどういう意味、これ日本語で何」とやられると、「あんた会社に遅れるでしょうよ」と言いたくなるし、まあ実際、全部日本語なんて無理。だが、私の日本語を真似て、この4、5日で彼は以下の日本語をマスター。
「今日は果物がない」「今日は果物があるよ」「コーヒー、どうしたの?」「いただきます」「ごちそうさま」「じゃね」
すごいではないか。ちゃんと、ですますで言ったほうがいいかなと思ったが、「これはあくまでカジュアルな言い方だから、クライアントやらに使わないように」と説明しておいた。まあ、クライアントに「今日は果物があるよ」と言う状況はありえないとは思うが。会議が終わって「じゃね」はありえるので、これは絶対言うなとは釘を刺しておいた。
結局、やる気なのだよなあ。私も努力せねば。あ、でも今日はひとつスウェーデン語の単語を知った。nya = new. 元はnyなのかな。続く単語によってaがつくとか?そこらへんはよく知らない。Pがスウェーデン語の新聞を読んでいて、その見出しの冒頭に「Nya」と書いてあったので、そこを指差しながら「にゃ」と言ってみたのだ。猫好きの私には逃せないスペルだろうって、関係ないけど。